ストーリーメーカーはこれまで18年もの間、企業のストーリー作成やメディアやデジタルチャネルを駆使したストーリーテリングを続けてきました。今回は代表インタビュー後編です。ストーリーメーカーの創立期メンバーで現在は代表取締役のビョルン・アイヒシュテットが、ストーリーメーカー自身のストーリーを始め、日本事業の成り立ちから欧州市場における日本企業のコミュニケーション上の課題について話しています。

(前編はこちらから。)

 

ヨーロッパにおける日本企業が直面するコミュニケーションの課題 

(聞き手: )
日本との関係について:

-ストーリーメーカーに入社し約12年後自ら日本事業を始めました。その背景も気になりますが、まずは自身と日本との関係について教えてください。

アイヒシュテット: 1970年台後半、私が5歳だった頃はアニメ、80年代には任天堂のゲーム、そして90年代は映画、と小さい頃から日本のポップカルチャーの影響を受けてきました。初めて日本を訪れたのは2010年の時で、妻との新婚旅行でした。その旅行を通して私たち二人とも日本の素晴らしさに惹かれ、その後何回も日本へ旅行をするほど日本を好きになりました。訪日を重ねるうちに、特にテクノロジーの分野で、これまでに聞いたことがない沢山の魅力的な日本企業や製品の存在に気付きました。と同時に、日本にも関心を持ちこれまで多くのテクノロジー企業の支援をしてきていながら、なぜ日本のテクノロジー企業の名前を聞いたことがないのか疑問に思ったことを今でも覚えています。

 

少し調べてみると、多くの日本のテクノロジー企業がドイツや欧州に拠点を構えていることが分かりました。しかしながら、現地市場での企業認知度は低く、欧州市場におけるコミュニケーション上の問題や課題を抱えているのではないかと考えました。例えば、企業ストーリーの伝え方を知らないのではと。このような背景から、ドイツや欧州市場での認知度を上げるために、日本企業の企業ストーリーを伝える支援ができるのではと思いました。日本のテクノロジー企業にはユニークな発想、そして高品質な製品があります。ドイツ市場にもそのような製品がより多く出回れば素晴らしいことでしょう。ですから、私はこの日本企業の支援に確信が持てました。

 

これが、日本事業を始めたきっかけです。

 

個人的な繋がりよりも、企業のストーリー

-日本とテクノロジーに関心があるにも関わらず、日本企業の名前を聞く機会がなかった理由は何だったと思いますか?

アイヒシュテット: 米国と日本企業のコミュニケーション戦略の違いを比べて説明すると分かりやすいかもしれません。

 

アメリカの企業は、ドイツや欧州に事務所を構える前から、よく現地市場でのPRやコミュニケーション活動を始めます。そのため、例えば私たちが直接アメリカの本社と意思疎通をとることが可能です。彼らの主な戦略は、企業の名前が知られた環境で営業部署が動けるように、企業名を広めて認知度を上げておくことです。また、メディア露出もリファレンスとして信頼性を高める材料になります。このような活動は、潜在顧客にリーチし現地でビジネスを始める上で大きなアドバンテージとなります。

 

一方で、日本企業は企業がある程度の規模にならない限り現地市場においてコミュニケーション部署を構えません。恐らくコミュニケーション戦略及び活動が、営業を支援する重要な要因であるとは考えられていないのでしょう。これは、日本での営業活動が飲み会などを通じて関係を築き上げていく、主に個人的なネットワークを通して行われていることに起因しているのかもしれません。

 

しかしながら、ドイツでは、特にテクノロジー業界やB2Bにおいては単純にやり方が異なります。ある会社について知りたいことがあれば、大体の情報を雑誌や新聞、インターネット上で調べます。飲み会などの個人的なネットワーク間ではなく、企業ストーリーや客観的な情報が重要視されます。個人の関係性も重要ですが、それはもっと後のフェーズにおいてで、まずは客観的な情報ソースが一般的です。

 

スポークスマンの重要性

-では、コミュニケーションが上手な日系企業はどこか思い浮かびますか?

アイヒシュテット: 任天堂は、興味深いストーリーテリング(Storytelling)の仕組みを持っていると思います。これは、彼ら自身のDNAや製品にストーリーテリングの要素が組み込まれているからだと思います。例えば、「スーパーマリオ」や「ゼルダの冒険」などのゲームには非常に古典的なストーリーテリングの要素が見られ、まさに私が前回お話しした「ゼロ・トゥ・ヒーロー」です。加えて、任天堂には宮本さんというスーパーマリオを生み出したスポークスマンがいますし、いつも彼がゲームアンバサダーとして公の場に出ます。これは欧米的な企業コミュニケーションの仕方で、より受け入れられやすいものだったと思います。ストーリーテリングをDNAに引き継いでいる彼らにとって、このようなコミュニケ-ションの取り方は自然なのかもしれないですね。

 

 

-日本企業にとってキーとなるのは、誰が代表して会社を引っ張っているか示すことですね。しかし、協調性・和を大切にする日本では中々難しいと思いますが、任天堂のように誰か代表者(スポークスマン)を選んだ方が良いと思いますか?

 

アイヒシュテット: はい、理想的にはそうです。再度任天堂を例にとってみると、彼らはアメリカ、ヨーロッパ、日本にスポークスマンがいます。一般的に、良いストーリーを持つための重要な要因の一つとして、視聴者が共感・関連付けできる顔や個性を持たせることが挙げられます。例えば、ほとんど誰もがスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバークをご存知でしょうし、彼らの考えや背景は広く知られています。このような人によるコミュニケーションを通じて、会社がもっと興味深い存在となるのです。日本でもこのようなやり方でうまくいっていると思いますし、例えばソフトバンクの孫社長は良い例です。また、スポークスマンとして企業を代表するのは設立者だけではなく、マネージャーも同様に務めることができます。

コミュニケーションの本質は、人と人とが繋がり関わり合います。ビジネス・ディナー(や飲み会)となると、一対一のレベルで関係が築かれていきますが、スポ-クスマンや代表者を立てることで、より多くの視聴者と、より高いレベルでビジネス関係を築けるようになります。人は、人と繋がりたいのです。

 

「あなたは何者で、その行動の理由は何か」

-欧州現地市場でのコミュニケーションにおいて、何が日本企業にとって重要だと思いますか?

アイヒシュテット: まず初めに日本企業が理解すべきことは、たとえもし日本で知名度があり、大規模のビジネスを展開していたとしても、ドイツの現地企業との関係構築はゼロから始まるということです。私は、多くの日本企業が現地企業との関係構築に苦労する様子を見てきました。その結果、日本で築いた元々の繋がりに戻ることが多いです。ですので、海外においても日本企業間のやりとりは多く見られます。これは、彼らが自社の製品や技術に重点を置いているためですが、それはドイツ市場で信頼関係を築く際に最初に伝えることではありません。

彼らが最初に説明しなくてはいけないことは、「自分が何者で、事業を始めたきっかけ、背景、そして今後の計画」というようなものです。このような自己紹介は非常に重要ですが、日本企業の多くは、自社について一度も聞いたことのない人に紹介をする状況にあまり出くわさないように感じます。ですので、初めの一歩として私が強くお勧めすることは、あなたが何者で、どこから来て、何をしたくて、どのように現地市場の企業を支援できるのか等についてよく考え、それからオーディエンスに語りかけて認知度を上げていくことです。

もう一つ重要なのは、会社に関する大切な情報を掲載した、見やすく分かり易いウェブサイトを持つことです。ドイツのB2Bにおいて、ある特定の会社から商品を購入する際、約80 %の人がGoogleで検索することから始めます。従って、現地のオーディエンスにとって分かり易い情報を含み、Googleを通して簡単に見つけられるウェブサイトを持つことは大切です。そして、次のステップとしてメディアにアプローチをかけてください。また、ターゲットとする人々がどこでどのように関わっているのかよく観察してください。ソーシャルメディアもドイツ市場では重要で、特に、LinkedInなどのビジネス志向のソーシャルメディアは日本ではあまり関係ないようですが、是非注目してみて下さい。

要するに、自社をよく理解し、正しいタッチポイントを見つけ、そしてコミュニケーションを始めましょう。

 

コミュニケーションとは情報の流れで、広告ではない

-B2Bにおいて、コミュニケーションがあまり重要視されていないように感じますが、コミュニケーションはB2B、そしてB2C両者とって大切だと思いますか?

アイヒシュテット: はい、もちろんです。コミュニケーションとは、他人があなたの行動に興味を持つように促す情報の流れのようなものです。

ドイツのB2B企業がある特定のプロジェクトを始めて新しいパートナーを探す場合、まず最初に、インターネット上で検索するか、ソーシャルメディアで知り合いに尋ねたり、あるいは企業のウェブサイトをチェックします。その後、どことチームを組むか決めます。そのため、もう一度言いますが、会社について分かり易い情報を提供しているウェブサイトを持つことは極めて重要なのです。そして、それは営業部署の大きな助けにもなりますし、これはB2Cにおいても同様です。

さらに、B2B・B2Cのみならず、潜在的な被雇用者とのコミュニケ-ションにおいても重要です。所謂、人材採用活動です。求職中の人々があなたの会社に興味がある場合、ウェブサイトをチェックして、その会社や仕事に本当に興味があるか確かめるはずです。

全ては、何をコミュニケーションと捉え、どのようにコミュニケ-ションを行うかです。ウェブサイトである必要はなく、新聞や記事、ソーシャルメディアなど実際にコミュニケーションが起こっている場でも構いません。しかし、多くのB2B企業が、コミュニケーション活動をテレビ広告や地下鉄の広告だと見なしています。ですが、それはコミュニケーションのごく一部です。

また、多くの日本人が国外でのコミュニケーションについてあまり経験を積んでいない印象を受けます。大半の人にとって、コミュニケ-ション活動は山手線での宣伝やプレスリリースの配信だと考えています。しかし、コミュニケ-ション方法はもっと多くのことを意味しています。コミュニケ-ションは、タッチポイントを通じてあなたの会社とターゲット層の間に流れているあらゆる種類の情報です。全ての会社がビジネス分野に関わらず、コミュニケ-ションを重要な戦略として考慮するべきです。

 

欧州市場におけるビジネスの成功

-ストーリーメーカーの日本事業に関するビジョンはありますか?

アイヒシュテット: 素晴らしい日本企業の認知度を上げ、欧州市場の事業成功のお力添えをすることです。もう一つの使命は、日本国外でのコミュニケーション方法について考える手助けをし、パートナーとしてストーリーメーカーをご検討頂けるよう支援していくことです。

これまでうまく取り組めてこれたので、5年前と比べると多くの日本企業の方々にストーリーメーカーのことを知って頂けていますが、まだまだ先は長いです。

そして、欧州企業とのビジネスは、将来的には日本企業にとってより関連性が高まると考えています。これは、ヨーロッパと日本間の自由貿易協定、東京オリンピック、2025年の大阪エキスポ、そしてグロ-バルな自動車産業における変革などが背景としてあります。またもう一つの理由としては、若者の人口が減っており、多くの日本企業もこの問題に直面しているからです。彼らが企業としてより成長したいのであれば、新しい顧客を求めて日本国外に目を向ける必要があります。

そのため、これらの状況は、「国外までメッセ-ジを届けるにはコミュニケ-ションに対する姿勢そのものを変える必要がある」と日本企業が気付くきっかけになるのでは、と私は考えています。

 


ストーリーメーカーは、日独・欧州との架け橋として日系企業のブランドストーリーに着目し、ドイツや欧州市場への進出時や現地での認知促進を望む企業に対して、最適なコミュニケーション戦略の立案・施行を行っています。

ご不明点やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

齋 直杜 (Naoto Sai): n.sai@storymaker.de

全ての企業には、企業独自のストーリーがあります。

そのストーリーは、どのように生まれ、どのような価値をもたらすのでしょうか?また、そのストーリーはどのように伝えられるべきなのでしょうか?

最も有効な方法は、自身の企業に関する「話題」に落とし込み自社に合った形式で伝えていくことです。それでは、どのように企業のストーリーの基盤となるような「話題」を見つけるのでしょうか?

ここで、いくつか有効な手段をご紹介します。

 

5W1H  テクニック

例えば、「クラウド」に関する記事をあなたが書くことになったとしましょう。「クラウド」とは「話題」でしょうか?いえ、まだ「話題」とは言えません。「話題」とは、市場に関する答えられるべき「問い」から生じるものです。

それでは、どのようにその「問い」を見つければよいのでしょうか?

ここで有効な手段が、5W1H(Why, Who, Where, When, What, and How)を用いたテクニックです。

例えば:

  • 5年後のクラウドサービスはどうなっているだろうか?
  • どうしてクラウドはあらゆるIT戦略の礎石になっているのだろうか?
  • クラウドサービスがどのように既存のビジネスモデルを書き換えたのか?
  • クラウドサービスの一番の魅力とはなにか?
  • どのようにしてレガシーシステム(旧来のシステム)がクラウドへと変革してきたのか?

もしこれらの問いの答えが、あなたのターゲット層にとって重要なものであれば、それが必然的に「話題」となります。

 

エッセンスの分解

話題の発掘に行き詰った場合は、その製品を構成する要素、即ちエッセンスを分解することも効果的です。私たちの生活の身近にあるネジを例に取って考えてみましょう。

ネジ素材は金属や木製などが使われ、ヘッド部分はあらゆる形状のパーツと溝(十字型、縦型、トルクス型 )があります。さらに物流プロセスを考えてみると、誰かに購入され、最終的には建築現場などで使われています。このように、その対象の構成要素や過程を細かく分解することで、より多くの切り口が見えて話題となる分野を広げることができます。

 

企業のストーリーと商品を関連付けて伝える

従来のマーケティングコミュニケーション手法では、主に「商品関連の情報」が中心であることに対し、ストーリーテリングはその商品と企業との文脈に焦点を当てた手法です。

 

- 企業のどのようなストーリーを伝えるべきでしょうか? -

 

例えば、「品質」に関する側面をコミュニケーションにおける重要事項と捉えた場合、自社を振り返りその側面に関するストーリーを見つけ出す必要があります。先程のネジの話を例にとると、「私達の最高作」というタイトルの記事(ストーリー)をつけることで、その記事を通してネジだけでなく企業の「品質」へのこだわりも同時に伝えられるはずです。

見出しを考える

新しいアイデアを考えたり、慣れ親しんだ話題に新たな魅力を加えるために、どの媒体でどのようなテーマについて書いたら良いか思考を巡らせることがあると思います。

例えば、「FORBES」という雑誌に記事を投稿する場合、ビジネス要素の強い見出しを思い浮かべる方が多いと思います。もし仮に先程のネジに関する記事を「FORBES」ではなく「ART Collectors」という雑誌に載せることになった場合、見出しの付け方が変わってくるはずです。このように、企業の「話題」を別の角度から捉えることも効果的です。

 

もし〇〇だったら?

この仮定法は、ストーリーを生み出す際の定石です。多くの脚本家や著者が、物語の要約や重要な出来事を書き上げる際に使用している手法です。

- もしもあなたの企業の製品やサービスが存在しなくなったら、世の中はどうなるでしょうか?

 

もしも火星飛行が企業の最初のミッションであった場合、企業の提供する商品やサービスはどのように貢献できるでしょうか?その際に、どのようなシナリオが考えられるでしょうか?

 

「話題」になる為の条件とは?

いかなる場合においても、ある情報が市場に認知されるためには、

    • 話題性
    • 関連性
    • 娯楽性

最低でもこれらの条件の1つを満たしている必要があります。

それに加え、インスピレーションを刺激する、議論を呼ぶ、特筆性がある、親和性がある、流行的である、もしくは流行に逆行した内容を含む話題であれば、拡散力がより大きくなります。このような「条件」を念頭に置いている人・企業は、話題を見つけるための「基本」を身に付けていると言えるでしょう。

 

ストーリーメーカーは企業の物語の軸となる要素を見つけ出し、ストーリー開発(メイキング)のお手伝いをしています。ご不明点やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。