ストーリーメーカーはこれまで18年もの間、企業のストーリー作成やメディアやデジタルチャネルを駆使したストーリーテリングを続けてきました。今回は代表インタビュー後編です。ストーリーメーカーの創立期メンバーで現在は代表取締役のビョルン・アイヒシュテットが、ストーリーメーカー自身のストーリーを始め、日本事業の成り立ちから欧州市場における日本企業のコミュニケーション上の課題について話しています。

(前編はこちらから。)

 

ヨーロッパにおける日本企業が直面するコミュニケーションの課題 

(聞き手: )
日本との関係について:

-ストーリーメーカーに入社し約12年後自ら日本事業を始めました。その背景も気になりますが、まずは自身と日本との関係について教えてください。

アイヒシュテット: 1970年台後半、私が5歳だった頃はアニメ、80年代には任天堂のゲーム、そして90年代は映画、と小さい頃から日本のポップカルチャーの影響を受けてきました。初めて日本を訪れたのは2010年の時で、妻との新婚旅行でした。その旅行を通して私たち二人とも日本の素晴らしさに惹かれ、その後何回も日本へ旅行をするほど日本を好きになりました。訪日を重ねるうちに、特にテクノロジーの分野で、これまでに聞いたことがない沢山の魅力的な日本企業や製品の存在に気付きました。と同時に、日本にも関心を持ちこれまで多くのテクノロジー企業の支援をしてきていながら、なぜ日本のテクノロジー企業の名前を聞いたことがないのか疑問に思ったことを今でも覚えています。

 

少し調べてみると、多くの日本のテクノロジー企業がドイツや欧州に拠点を構えていることが分かりました。しかしながら、現地市場での企業認知度は低く、欧州市場におけるコミュニケーション上の問題や課題を抱えているのではないかと考えました。例えば、企業ストーリーの伝え方を知らないのではと。このような背景から、ドイツや欧州市場での認知度を上げるために、日本企業の企業ストーリーを伝える支援ができるのではと思いました。日本のテクノロジー企業にはユニークな発想、そして高品質な製品があります。ドイツ市場にもそのような製品がより多く出回れば素晴らしいことでしょう。ですから、私はこの日本企業の支援に確信が持てました。

 

これが、日本事業を始めたきっかけです。

 

個人的な繋がりよりも、企業のストーリー

-日本とテクノロジーに関心があるにも関わらず、日本企業の名前を聞く機会がなかった理由は何だったと思いますか?

アイヒシュテット: 米国と日本企業のコミュニケーション戦略の違いを比べて説明すると分かりやすいかもしれません。

 

アメリカの企業は、ドイツや欧州に事務所を構える前から、よく現地市場でのPRやコミュニケーション活動を始めます。そのため、例えば私たちが直接アメリカの本社と意思疎通をとることが可能です。彼らの主な戦略は、企業の名前が知られた環境で営業部署が動けるように、企業名を広めて認知度を上げておくことです。また、メディア露出もリファレンスとして信頼性を高める材料になります。このような活動は、潜在顧客にリーチし現地でビジネスを始める上で大きなアドバンテージとなります。

 

一方で、日本企業は企業がある程度の規模にならない限り現地市場においてコミュニケーション部署を構えません。恐らくコミュニケーション戦略及び活動が、営業を支援する重要な要因であるとは考えられていないのでしょう。これは、日本での営業活動が飲み会などを通じて関係を築き上げていく、主に個人的なネットワークを通して行われていることに起因しているのかもしれません。

 

しかしながら、ドイツでは、特にテクノロジー業界やB2Bにおいては単純にやり方が異なります。ある会社について知りたいことがあれば、大体の情報を雑誌や新聞、インターネット上で調べます。飲み会などの個人的なネットワーク間ではなく、企業ストーリーや客観的な情報が重要視されます。個人の関係性も重要ですが、それはもっと後のフェーズにおいてで、まずは客観的な情報ソースが一般的です。

 

スポークスマンの重要性

-では、コミュニケーションが上手な日系企業はどこか思い浮かびますか?

アイヒシュテット: 任天堂は、興味深いストーリーテリング(Storytelling)の仕組みを持っていると思います。これは、彼ら自身のDNAや製品にストーリーテリングの要素が組み込まれているからだと思います。例えば、「スーパーマリオ」や「ゼルダの冒険」などのゲームには非常に古典的なストーリーテリングの要素が見られ、まさに私が前回お話しした「ゼロ・トゥ・ヒーロー」です。加えて、任天堂には宮本さんというスーパーマリオを生み出したスポークスマンがいますし、いつも彼がゲームアンバサダーとして公の場に出ます。これは欧米的な企業コミュニケーションの仕方で、より受け入れられやすいものだったと思います。ストーリーテリングをDNAに引き継いでいる彼らにとって、このようなコミュニケ-ションの取り方は自然なのかもしれないですね。

 

 

-日本企業にとってキーとなるのは、誰が代表して会社を引っ張っているか示すことですね。しかし、協調性・和を大切にする日本では中々難しいと思いますが、任天堂のように誰か代表者(スポークスマン)を選んだ方が良いと思いますか?

 

アイヒシュテット: はい、理想的にはそうです。再度任天堂を例にとってみると、彼らはアメリカ、ヨーロッパ、日本にスポークスマンがいます。一般的に、良いストーリーを持つための重要な要因の一つとして、視聴者が共感・関連付けできる顔や個性を持たせることが挙げられます。例えば、ほとんど誰もがスティーブ・ジョブズやマーク・ザッカーバークをご存知でしょうし、彼らの考えや背景は広く知られています。このような人によるコミュニケーションを通じて、会社がもっと興味深い存在となるのです。日本でもこのようなやり方でうまくいっていると思いますし、例えばソフトバンクの孫社長は良い例です。また、スポークスマンとして企業を代表するのは設立者だけではなく、マネージャーも同様に務めることができます。

コミュニケーションの本質は、人と人とが繋がり関わり合います。ビジネス・ディナー(や飲み会)となると、一対一のレベルで関係が築かれていきますが、スポ-クスマンや代表者を立てることで、より多くの視聴者と、より高いレベルでビジネス関係を築けるようになります。人は、人と繋がりたいのです。

 

「あなたは何者で、その行動の理由は何か」

-欧州現地市場でのコミュニケーションにおいて、何が日本企業にとって重要だと思いますか?

アイヒシュテット: まず初めに日本企業が理解すべきことは、たとえもし日本で知名度があり、大規模のビジネスを展開していたとしても、ドイツの現地企業との関係構築はゼロから始まるということです。私は、多くの日本企業が現地企業との関係構築に苦労する様子を見てきました。その結果、日本で築いた元々の繋がりに戻ることが多いです。ですので、海外においても日本企業間のやりとりは多く見られます。これは、彼らが自社の製品や技術に重点を置いているためですが、それはドイツ市場で信頼関係を築く際に最初に伝えることではありません。

彼らが最初に説明しなくてはいけないことは、「自分が何者で、事業を始めたきっかけ、背景、そして今後の計画」というようなものです。このような自己紹介は非常に重要ですが、日本企業の多くは、自社について一度も聞いたことのない人に紹介をする状況にあまり出くわさないように感じます。ですので、初めの一歩として私が強くお勧めすることは、あなたが何者で、どこから来て、何をしたくて、どのように現地市場の企業を支援できるのか等についてよく考え、それからオーディエンスに語りかけて認知度を上げていくことです。

もう一つ重要なのは、会社に関する大切な情報を掲載した、見やすく分かり易いウェブサイトを持つことです。ドイツのB2Bにおいて、ある特定の会社から商品を購入する際、約80 %の人がGoogleで検索することから始めます。従って、現地のオーディエンスにとって分かり易い情報を含み、Googleを通して簡単に見つけられるウェブサイトを持つことは大切です。そして、次のステップとしてメディアにアプローチをかけてください。また、ターゲットとする人々がどこでどのように関わっているのかよく観察してください。ソーシャルメディアもドイツ市場では重要で、特に、LinkedInなどのビジネス志向のソーシャルメディアは日本ではあまり関係ないようですが、是非注目してみて下さい。

要するに、自社をよく理解し、正しいタッチポイントを見つけ、そしてコミュニケーションを始めましょう。

 

コミュニケーションとは情報の流れで、広告ではない

-B2Bにおいて、コミュニケーションがあまり重要視されていないように感じますが、コミュニケーションはB2B、そしてB2C両者とって大切だと思いますか?

アイヒシュテット: はい、もちろんです。コミュニケーションとは、他人があなたの行動に興味を持つように促す情報の流れのようなものです。

ドイツのB2B企業がある特定のプロジェクトを始めて新しいパートナーを探す場合、まず最初に、インターネット上で検索するか、ソーシャルメディアで知り合いに尋ねたり、あるいは企業のウェブサイトをチェックします。その後、どことチームを組むか決めます。そのため、もう一度言いますが、会社について分かり易い情報を提供しているウェブサイトを持つことは極めて重要なのです。そして、それは営業部署の大きな助けにもなりますし、これはB2Cにおいても同様です。

さらに、B2B・B2Cのみならず、潜在的な被雇用者とのコミュニケ-ションにおいても重要です。所謂、人材採用活動です。求職中の人々があなたの会社に興味がある場合、ウェブサイトをチェックして、その会社や仕事に本当に興味があるか確かめるはずです。

全ては、何をコミュニケーションと捉え、どのようにコミュニケ-ションを行うかです。ウェブサイトである必要はなく、新聞や記事、ソーシャルメディアなど実際にコミュニケーションが起こっている場でも構いません。しかし、多くのB2B企業が、コミュニケーション活動をテレビ広告や地下鉄の広告だと見なしています。ですが、それはコミュニケーションのごく一部です。

また、多くの日本人が国外でのコミュニケーションについてあまり経験を積んでいない印象を受けます。大半の人にとって、コミュニケ-ション活動は山手線での宣伝やプレスリリースの配信だと考えています。しかし、コミュニケ-ション方法はもっと多くのことを意味しています。コミュニケ-ションは、タッチポイントを通じてあなたの会社とターゲット層の間に流れているあらゆる種類の情報です。全ての会社がビジネス分野に関わらず、コミュニケ-ションを重要な戦略として考慮するべきです。

 

欧州市場におけるビジネスの成功

-ストーリーメーカーの日本事業に関するビジョンはありますか?

アイヒシュテット: 素晴らしい日本企業の認知度を上げ、欧州市場の事業成功のお力添えをすることです。もう一つの使命は、日本国外でのコミュニケーション方法について考える手助けをし、パートナーとしてストーリーメーカーをご検討頂けるよう支援していくことです。

これまでうまく取り組めてこれたので、5年前と比べると多くの日本企業の方々にストーリーメーカーのことを知って頂けていますが、まだまだ先は長いです。

そして、欧州企業とのビジネスは、将来的には日本企業にとってより関連性が高まると考えています。これは、ヨーロッパと日本間の自由貿易協定、東京オリンピック、2025年の大阪エキスポ、そしてグロ-バルな自動車産業における変革などが背景としてあります。またもう一つの理由としては、若者の人口が減っており、多くの日本企業もこの問題に直面しているからです。彼らが企業としてより成長したいのであれば、新しい顧客を求めて日本国外に目を向ける必要があります。

そのため、これらの状況は、「国外までメッセ-ジを届けるにはコミュニケ-ションに対する姿勢そのものを変える必要がある」と日本企業が気付くきっかけになるのでは、と私は考えています。

 


ストーリーメーカーは、日独・欧州との架け橋として日系企業のブランドストーリーに着目し、ドイツや欧州市場への進出時や現地での認知促進を望む企業に対して、最適なコミュニケーション戦略の立案・施行を行っています。

ご不明点やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

大浦詩織カミラ: cs.oura-mueller@storymaker.de

ストーリーメーカーはこれまで18年もの間、企業のストーリー作成やメディアやデジタルチャネルを駆使したストーリーテリングを続けてきました。今回は、そんなストーリーメーカーの創立期メンバーで現在は代表取締役のビョルン・アイヒシュテットが、ストーリーメーカー自身のストーリーを始め、日本事業の成り立ちから欧州市場における日本企業のコミュニケーション課題について話しています。

 

テクノロジー×ジャーナリズムへの世界へ

(聞き手: )

ストーリーメーカーとの出会いは?

 

アイヒシュテット: 今から約18年前、私がストーリーメーカーで最初の新人研修員になったことにはいくつか偶然があったのですが、そもそも学生時代からテクノロジーやPRの分野に興味を持つきっかけが3つありました。まず一つ目が、90年代初頭に始まったインターネット時代の到来です。当時まだコンピューターは大学など特定の場所でしか普及していませんでしたが、その頃から大学のパソコンルームへ行ってはインターネットに触れていたことをきっかけに、インターネットへの関心が高まっていきました。1994年に初めてブラウザーを開いた時の事を、今でも鮮明に覚えています。現在はデジタルトランスフォーメーションの話題でもちきりですが、それと同じように当時はインターネットの話題ばかりでしたね。

また、当時フリージャーナリストとして地元メディアで記事を書いていて、その当時の仕事からも影響を受けました。調査開始時点ではあまり知らなかった事柄を深堀りし、それを記事として執筆することに興味を惹かれていったんです。

最後のきっかけですが、これは大学での専攻に関わっています。専門は神経生物学で、修士論文では「人の関心を視覚的にどのように引き付けるか」というテーマで書きました。

これら3つの要素が合わさったことで、ITやマーケティング、PRに関する仕事を探そうと考えるようになり、最終的にはストーリーメーカーで働くことになったわけです。

 

「ストーリーメーカー」とは何を意味しているのでしょうか?

 

アイヒシュテットストーリーメーカーの創業者であるハイデラン・ハーグが、80年代にテクノロジー分野のジャーナリストとして働いていた頃、テクノロジー企業のほとんどがその企業のストーリーを伝えていないことに気付きました。彼らは、ほとんど誰も理解できないような技術の詳細や事実情報しか伝えていなかったのです。しかし、彼女にとって関心のある要素は、「企業が何者であるのか、事業背景や今後のビジョン、そしてその企業自身が市場や人々とどのような関連性があるのか」といったものでした。

このジャーナリストとしての気づきから、この現状を変え、製品推しではなくより良い企業ストーリーを伝えていく必要があるという想いから、ストーリーメーカーという名前で企業を設立しました。

 

 

先駆者であり続ける為の好奇心と仕事の質へのこだわり

 

-ストーリーメーカーの企業文化をどのように表現しますか? ストーリーメーカーについて教えてください。

 

アイヒシュテット「好奇心」、という言葉が相応しいかもしれません。これまで沢山のことをやり遂げパイオニアとしての地位を確立してきましたが、これも好奇心があるおかげです。例えば、「ストーリー」は今でこそマーケティング戦略において話題になっていますが、私たちは既に18年前からその重要性に焦点を当てていました。

ストーリーメーカーの基本理念は、”全ての企業には唯一無二のストーリーがあり、その独自のストーリーを企業に合った方法で伝えることが、聴き手(ターゲットオーディエンス)とのコミュニケーションを図る上で重要である”、というものです。また、私達のビジョンは、その企業のストーリーと企業がリーチしたい聴き手のストーリーを繋ぐ、橋渡し役になることです。ここで言う聴き手とは、現存・潜在を含む、顧客や従業員、あるいは社会全体をも意味しています。

要するに、ストーリーメーカーの企業文化とは、先駆者としての好奇心から常に新しい事を楽しみながら探すこと、ストーリーデザインを基軸に質の高い仕事をしていくことに強いやりがいを見出しています。

 

 

“ZERO to HERO” & “WHY”

「ゼロ・トゥ・ヒーロー」、そして注目すべきWhy

 

-「ストーリーテリング」とは何でしょうか? ストーリーメーカーとしてどのようなサービスを提供していますか?

 

アイヒシュテットストーリーテリングの説明の前に、まず”ストーリー”とは何かについて話しますね。ストーリーとは、ある人(もしくは事柄)の成長の過程や変化、紆余曲折の旅や冒険を語る物語です。例えば、その人(企業)がどこから来て、どこへ向かっているのか。私達はこれを「ZERO to HERO (ゼロ・トゥ・ヒーロー)」と呼んでいます。つまり、普通の人があらゆる困難を乗り越えて「ヒーロー」になるまでのスーパーヒーロー物語です。

 

 

このように、ストーリーとは主人公の成長を描いた唯一無二の物語を示しており、すべての個人・企業・顧客には、それぞれ独自のストーリーがあるはずです。つまり、ストーリーテリングとは、自分が誰で、どのような旅をしていて、その活動がどのように周りの旅の助けになるのかを伝えて理解してもらう為の重要な活動であると同時に、コミュニケーションの礎となるものです。そしてこれが企業と聴き手側とのコミュニケーションの本来あるべき形だと考えています。

 

良いストーリーテリングにおいて重要な要素の一つは「Why – なぜ」に焦点を当てることです。

 

その企業のモチベーションやアイデアの源泉はどこにあるのか、その市場でビジネスを行う理由は何か、なぜその方向に進みたいのかなど、「なぜ」に焦点を当てたストーリーを伝えることによって聴き手が企業のストーリーを理解しやすくなります。そしてこの「なぜ」の部分こそがコミュニケーションにおいて重要なのですが、特にテクノロジー企業においては商品や技術的な特徴については多くを語ることができるものの、「なぜ」という部分が抜けてしまう傾向にあります。そのような企業と聴き手との間の橋渡し役として、私達はストーリーメイキングのアプローチを用いて企業の唯一無二のストーリーデザインを手助けしています。

 

情報の「流れ」を意識したストーリーテリング

 

-この数年でストーリーテリングへの関心が高まってきていますが、なぜこのような変化が起こっているのでしょうか?

 

アイヒシュテット:理由はいくつかありますが、ソーシャルメディアの登場は一つの大きな要因だと考えています。ソーシャルメディアが登場する前までは、各メディアにプレスリリースを送って新聞や雑誌などの記事にしてもらうことがPR活動の主な目的であり、それが企業の発信した情報の終着点でした。このようなコミュニケーションにおいては、情報の受け取り手の反応はほとんど知ることはできません。それに対して現在ではソーシャルメディアを通じて、企業が発信したストーリーとその伝え方に対して、受け取り手がどのような反応をし、どのようにその情報をシェアするのか、またどのような情報が好まれ、シェアしたいと思われるのかという事が分析できるようになったことで、発信するストーリー自体の質とその伝え方の重要性への関心が高まってきていると思います。要するに、単なる事実ベースの情報発信よりも、良質なストーリーを含む情報に対して人々はよりポジティブな反応を示す傾向があるので、それに伴ってストーリーデザインあるいはストリーテリングへの注目が集まっているのです。

 

 

続く第二弾ではストーリーメーカーが日本事業を始めたきっかけについて紹介していきます。

(後編はこちらから。)

 

 


ストーリーメーカーは、日独・欧州との架け橋として日系企業のブランドストーリーに着目し、ドイツや欧州市場への進出時や現地での認知促進を望む企業に対して、最適なコミュニケーション戦略の立案・施行を行っています。テクノロジー企業の独・欧州進出支援をする一方で、私たちストーリーメーカーも常に最新の技術や製品に関心を持っています。

ご不明点やご質問等ございましたら、お気軽にお問い合わせください。

大浦詩織カミラ: cs.oura-mueller@storymaker.de

Create to Innovate・オープンイノベーション」をテーマに掲げ、世界中のクリエイションとイノベーションを紹介しているクリエイティブ経済誌のBTL(BUSINESS TIMELINE)さんより、日系企業のドイツ・欧州市場参入における課題とStorymakerのストーリーデザイン戦略に関しての記事に取りあげて頂きました。

Storymakerが日本事業を始めた背景、日本とドイツとの文化の違いが及ぼすビジネスへの影響、ストーリーテリングを活用したコミュニケーション戦略の重要性についてわかりやすくご紹介頂いております。ドイツ・欧州市場と日本企業との架け橋としてのStorymakerの取り組みを是非ご覧下さい。(下記画像をクリックで記事へ飛びます。)

 

 

 


最新デジタル技術を駆使したデジタルアートミュージアム、チームラボ ボーダレスは日本のみならずヨーロッパを中心に海外でも大きな話題を呼んでいます。

今回は、チームラボのサクセスストーリーの本質を紐解くため、Storymaker 代表のビョルン・アイヒシュテットがチームラボ ボーダレスを訪れました。チームラボのアイデンティティでもある「ボーダレス」という価値観、海外に向けた想いについて、チームラボのソーシャルブランディングチームの加藤 謙さんにお話を伺ってきました。

 

(聞き手:ビョルン・アイヒシュテット)

これまでの展示は主に日本人をターゲットにされていましたが、このデジタルアートミュージアムはボーダレスということで世界中の方をターゲットにされているという認識でよろしいでしょうか?

加藤さん:はい、その通りです。現状、来場者の約3割は海外からのお客さんです。この数字は、とても意味のあることだと思っています。例えば、オープンして1年経過した施設であればまだしも、海外ではあまり情報が出回っていない中僅か2カ月でこれだけの外国人観光客が来てくれていることには驚いていますし、大変光栄なことです。

 

これまでのイベントにおいてはオンラインでチケットを購入する際、日本語でのサービスしか行われていなかったと思いますが、今回のデジタルアートミュージアムに関しては英語で情報配信されていますね。それは、今回のテーマである「ボーダーレス」ということを意識して、英語での情報配信やチケット販売を行っていたのでしょうか?

加藤さん:はい、それはとても意識していました。特に今はチケットの売り切れが続いており、当日券の販売も行っていません(※8月取材当時の状況)。仮にインターネット販売を行っていなかったら、海外からお越しの方にわざわざ足を運んで頂いても観覧できない状況になってしまいます。それでは非常に残念なので、世界の誰もが同じタイミングでチケットを買える状況を整えることは非常に重要でした。

 

チームラボ ボーダレスを海外の方からどのように認知されたいと考えていますか?

加藤さん:チームラボは世界中で展示会を行っていますが、常設の展示会は今回の東京が初めてで、私達の代表作でもあります。観光客が東京を訪れるときに、必ず訪れてもらえる場所にしたいという想いがありました。この場所はエンターテインメントと捉えられることが多いですが、私達としては美術館という位置づけです。例えば、ニューヨークに行ったら現代美術館(MOMA)、パリに来たらルーブル美術館、ロンドンに来たらテート美術館というように、東京にきたらチームラボ ボーダレスに行く、となるのが私達の理想です。

 

「ボーダーレス」についての質問ですが、技術と自然のボーダレス、子供と大人のボーダレス、空間においてもオープンなものとクローズなものとのボーダレスといったものがありますよね。書かれた絵がデジタルで映し出されたり、空間自体は物理的にはボーダーレスではないにせよ、それを作り出すために鏡を用いるなど、至る所に「ボーダレス」な演出が見受けられました。これらの演出は、例えば二年後にまた訪れたら同じものを見られるのか、それとも全く違う空間を見ることができるのでしょうか?

加藤さん:作品自体を物理的に入れ替えることは一年に一つ二つあるかもしれませんが、基本的には物理的な建築を加える予定はありません。但し、同じ空間の中にも投影される作品は季節によって変わるようになっています。

例えば、滝の部屋に咲いている花は毎月違う花が咲くようになっています。夏はひまわりが咲き蛍が飛んでいたり、秋の収穫の時期には黄金色の畑と変わり、冬は雪景色を楽しめるので、季節によって見られるものが変化する可能性はあります。

 

このデジタルアートミュージアムは子供から大人まで年代問わず愉しめる内容となっていますが、作品の技術的背景の説明がほしいというような反応も多いと伺いました。そういった要望に対して今後は技術的な説明を加えていくのか、あるいは必要以上の情報発信・説明はしないのか、どのような方向性なのでしょうか?

加藤さん:当初は、まず世界中の人に見てもらいたいということがポイントになっていたので、文字を使わず、マップや決まったルートなどの説明的な要素が一切ない空間を作ろうと意識していました。その一方で、博物館のようにオーディオセットなどで細かい説明をあえて提供するという二つの極端な方向性があると思っています。

館内に入るとすぐに通路が3つに別れていたと思いますが、実はオープン当初は文字での案内はありませんでした。ですが、今は案内を付け加えていて、文字があった方がより人の想像力を掻き立てる、もしくは理解が深まることもあるので、お客様の反応を見ながら随時必要な工夫を施しています。チームラボ ボーダレスは、二カ月前に生まれた赤ん坊のような存在で、これからもっと良い方向に進化していくと信じています。

 

お客様の反応を見ながら変えていくとのことですが、説明的な要素がないとわかりにくいという意見は主に大人の方からきていて、子供はほとんど関係なく楽しめているということですね?

加藤さん:そうですね。特に大人の方は事前にウェブサイトで調べて、この作品をみたい・全部見てみたいということをすごく気にされているようです。一方で子供たちは、今、その瞬間目の前にある感動が重要な要素になっていると思います。

開始当初から、言葉を読めない子供や外国の方でも隔たりなく、感性だけで作品体験をできるように…と思って表現を追求していたものですから、文章要素は、私達のやりたいことから離れていく、つまり説明する場所になってしまうという懸念があり、説明を少なくしていきました。

 

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デジタル技術に関してお伺いしますが、デジタル技術をこのような方法で再現するにあたって何が最も大きな課題でしたか?あるいは特筆すべき技術はどのようなものなのでしょうか?

加藤さん:様々なデジタル技術の融合でこのミュージアムは成り立っています。例えば、映像制作者、人を検知するセンサーを制御する人、建築や鏡の配置を考える人、音楽を作る人など。それぞれに技術的な課題はありましたが、美術館全体としては、ボーダレスということが大きな課題でした。例えば、館内を光のカラスが飛んでいますが、あの鳥は一つの部屋に居続けるのではなく、部屋を飛び出し壁を通って別の作品にも表れます。一つ一つの作品を完成させるだけでなく、作品を行き来するモノや要素が存在しています。全体を一つに整えて、気持ちの良い体験を作り上げるということが困難な点で、チームラボが初めて挑戦したことでもあります。

 

この美術館はチームラボにとって故郷であり本拠地のような位置づけでもあると思いますが、ボーダレスという概念はチームラボの一つのアイデンティティになっているのでしょうか?

加藤さん:私達のアイデンティティとして、ボーダーレスは非常に重要です。色々なバックグラウンドの方が集まって一つの組織を作りモノづくりを行っています。国籍も様々で、例えば花の絵を描いた人、それをコンピュータのアルゴリズムに落とした人、その部屋に向かうサインを作った人たちは皆すべて違う国籍です。

それから、もう一つボーダレスという概念が私達の重要なアイデンティティになったきっかけがあります。パリで「モナリザ」を鑑賞していた時のことですが、「モナリザ」は防弾ガラスで囲まれていて、その前に仕切りスペースがあり、柵の手前でたくさんの人がスマホを構えていました。私はそのスマホ越しで「モナリザ」を見たのですが、その経験が今でも大きく印象に残っています。「モナリザ」は人類の宝物なので、それで良いと思います。ですが、私達はデジタルテクノロジーでアートを作っているので、物理的な「故障」というものがありません。例えば、壁に投影された花を触ったからといって、花が壊れることはありません。そういう素材を使ってモノを作っているのであれば、「モナリザ」と鑑賞者の間にあった障壁を取り除くことができます。この考え方は私達がアートを作り始めた当初からありました。

例えば京都の下鴨神社での「糺の森の光の祭」アートプロジェクトも、もし私達がペンキで絵を描く人達だったら絶対に許されないことをやっていると思います。しかし、色や光を使っているだけなので、電源を切ってしまえばいつもの下鴨神社に戻ります。そのようなモノづくりを積み重ねていく中で、作品と作品の境界も、人と作品の境界もないものを作ろうというポイントにやっと辿り着いたんです。

 

現在はパリでも展示を行っていますし、次はヘルシンキでもチームラボ の展覧会が開催されると伺いましたが、今後は東京のデジタルアートミュージアムのようにヨーロッパでも常設展示を行う予定はありますか?

加藤さん:私達の作品は鑑賞者がどの国の人であっても楽しめるということがポイントだと思います。もちろん、ヨーロッパでも常設の展示会を作れたら嬉しいです。ただし、東京でこれを実現できたのは、私たちの力だけではなく、東京に魅力的な施設を作りたいと考えていた森ビルさんと協力できたからです。森ビルさんは、六本木ヒルズを作り、六本木ヒルズに森美術館という格の高い美術館を持っています。そしてこのお台場の大きな敷地に対して、文化を発信する場所を作りたいと考えていました。そういった背景がありますので、私達が常設の展示会を作りたいという想い、森ビルさんの場づくりへの想い、EPSONさんの投影技術など、素晴らしいパートナーの方々と出会えたことでこのチームラボ ボーダレスは成り立っています。

今回のヘルシンキでの展示開催においても、新設のアモスレックス(AMOS Rex)美術館のオープニング展覧会として呼んで頂きました。東京ほどではありませんが、大きな美術館での開催ですので、ここと同じ作品もご覧いただけます。ヨーロッパの方々にも、自分が書いた絵がアート作品に投影される経験をしてもらいたいです。

 

私が書いている雑誌の記事の読者たちは、東京に来るよりはヘルシンキに来た方が近いと思いますので、より多くのヨーロッパの方がチームラボ ボーダレスを体験できるようにヘルシンキでの開催も記事にしようと思っております。

加藤さん:ありがとうございます。

 

こちらこそ、どうもありがとうございました。

 

 


ストーリーメーカーは、日独・欧州との架け橋として日系企業のブランドストーリーに着目し、ドイツや欧州市場への進出時や現地での認知促進を望む企業に対して、最適なコミュニケーション戦略の立案・施行を行っています。テクノロジー企業の独・欧州進出支援をする一方で、私たちストーリーメーカーも常に最新の技術や製品に関心を持っています。

 

皆さんは変なホテルをご存知でしょうか?エイチ・アイ・エスグループ (以下H.I.S.)が展開しているロボットホテルで、2015年7月に長崎県佐世保市にあるハウステンボスに一号店がオープンし、2016年には初めてロボットが働くホテルとしてギネス世界記録に認定されています。

今回は5月下旬の日本出張時に変なホテル東京 銀座に滞在してきました。

今回の滞在中、変なホテル東京 銀座の中村考宏マネージャーに取材をさせて頂く機会があり、変なホテル東京 銀座のご紹介に加え、大変貴重なお話を聞かせて頂くことができました。中村さんは新卒としてH.I.S.に入社し、その後変なホテル東京 銀座を立ち上げる社内公募に自ら応募したそうです。H.I.S.は新しいことを社員にどんどん挑戦させる社風があり、元々一から立ち上げる経験をしてみたいと考えていた中村さんにマッチングしたようです。

変なホテル東京 銀座中村マネージャー

変なホテル東京 銀座中村マネージャー

(聞き手: 齋 直杜)
「変な」とは、「奇妙な、変わった」という意味に捉えられがちだと思いますが、この「変なホテル」とは実際何を意味しているのでしょうか?また、変なホテルについて簡単にご説明をお願い致します。

中村考宏氏:実際に、「変なホテル」は「変わったホテル」だと認識されることが多いと思います。しかし、私たちはこの「変」を「変化」の「変」として使用しており、このホテルは、変わり続けることを約束するホテルとして「変なホテル」と名付けられました。現在、長崎県ハウステンボスにある変なホテルに加え、愛知に1つ、東京には4つの変なホテルがあり、今後は3つのホテルが東京にオープン予定です。その後、西日本エリアにも展開していく予定となっています。
宿泊施設不足・人手不足の解消や労働の効率化を目指して、最新ロボットを導入した変なホテルが誕生しました。ちなみに、変なホテルのロゴは蝶(オオムラサキ)と竹を組み合わせたものです。蝶は幼虫から蝶になるまで変化し、竹はその成長速度が速く、常に変化していくことを意味しています。

変なホテルで実際に働かれている「人」はいらっしゃいますか?

中村氏:はい、変なホテル東京 銀座では受付にスタッフが居り、受付ロボットと協同でチェックインなどを行っています。セキュリティ面は最も大きな課題であり、ロボットは緊急事態に対応することができないため、宿泊者の方々の安全のために常時スタッフを配置しています。

人とロボットの協同は興味深いテーマですが、変なホテルにとっての人とロボットの協同とはどのようなものでしょうか?

中村氏:人間とロボットの協同としては、簡単な作業やデータ収集(チェックイン時のカードデータの読み込み等)などはロボットが行い、クリエイティブなアイデアに人が時間をかけて取り組むことで、新しいサービスが生まれていくのではと考えています。

ロボットを導入するにあたり最も困難な点はどこでしたか?

中村氏:現状ロボットではお客様のニーズや緊急事態への柔軟な対応が難しく、最新技術で出来ることをサービスに置き換えたときに、まだまだロボットの進化は必要です。しかし、変なホテルのコンセプトにある 「変化し続ける」はまさにその通りであり、お客様のニーズに対しロボットが出来ることをマッチングさせることは、この「変なホテル」だからこそ挑戦できることだと思います。

変なホテルにはどのようなロボットが導入されているのでしょうか?

中村氏:当ホテル受付付近には、受付ロボット、窓を自動で拭く機械、移動空気清浄器やルンバの4つを導入しています。お部屋には服の除菌や消臭、更にはしわの除去効果もあるLG Stylerを始めとし、海外からのお客様がお好きなコンテンツを楽しめるようにとグーグルクロームキャストも導入しました。無料で貸し出しのスマートフォン「handy」は、別の部屋にあるhandyへの連絡が簡単にできるため家族連れに人気です。加えて、このhandyはリモコンにもなり、部屋の明かりやエアコンを調整でき、最終的には部屋の鍵にも生まれ変わります。

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海外からの宿泊者も多いですか? 彼らにうけている点はどこでしょうか?

中村氏:変なホテル銀座は日々約3割の訪日観光客にご利用頂いています。2020年の東京オリンピックに向け東京という都市はかなりの注目を浴びていますが、その中でも銀座という街は東京に来る約半数の訪日観光客が訪れる街となっており、また当ホテルは訪日観光客に人気の築地市場にも徒歩10分圏内と好立地であるため選んで頂けていると思います。

変なホテルの受付ロボットは何カ国語まで対応していますか?

中村氏:日本語、英語、中国語、韓国語の4カ国語に加え、現在は通訳アプリなどの導入により多言語化を実現していこうと考えています。

今後ドイツや欧州で変なホテルをオープンする予定はありますか?

中村氏:今のところ予定はございません。

どうもありがとうございました。

ストーリーメーカーは、ドイツや欧州市場への進出時や現地での認知促進を望む日系企業に対して、最適なコミュニケーション戦略の立案・施行を行っています。テクノロジー企業の独・欧州進出支援をする一方で、私たちストーリーメーカーも常に最新の技術や製品に関心を持っています。